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京都地方裁判所 昭和39年(レ)63号 判決 1965年11月25日

控訴人

奥村虎之助

代理人

奥西正雄

被控訴人

竹田フジエ

ほか六名

右七名代理人

坪野米男

山口貞夫

白坂武

主文

本件控訴はこれを棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人竹田フジエ、同竹田泰子、同竹田幸生は控訴人に対し別紙目録記載の家屋より退去せよ。被控訴人等は控訴人に対し右家屋を収去して別紙目録記載の土地を明渡せよ。被控訴人竹田幸生は控訴人に対し金五〇、〇〇〇円とこれに対する昭和三七年六月一八日から支払済に至るまで年五分の割合の金員を支払え。被控訴人等は連帯して控訴人に対し昭和三六年一二月九日から右土地明渡済に至るまで一ケ月金八、〇〇〇円の割合の金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被控訴人等代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に訂正補充するほか、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

原判決三枚目表一〇行目の「家賃」を「賃料」と訂正し、六枚目表五行目と六行目の間に「被告幸生は同三六年八月頃右鑑定の算定基礎(額は明示しないが、その基礎によつて額を算定できるもの)を原告に示して提供したが、原告によつて拒否された」を加え、六枚目裏八行目の「割合」のつぎに、「賃料不足金三〇、七〇八円および遅延損害金一、七九二円の」を加え、七枚目表冒頭に、「原告請求の賃料、遅延損害金は、被告幸生のした供託によつて消滅している」を加える。

証拠<省略>

理由

控訴人の主張に対する判断は、以下に補充訂正変更(編注、省略)するほか、原判決理由記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

<中略>

つぎに、控訴人の被控訴人幸生に対する、昭和三六年六月一日から同年一二月八日までの、月額八、〇〇〇円の割合による賃料未払分金五〇、〇〇〇円と、これに対する訴状送達の翌日である昭和三七年六月一八日以降支払済まで年五分の割合による遅延損害金支払の請求について判断する。

被控訴人幸生が、まず従前の賃料、ついで自己の依頼した鑑定人の鑑定による賃料と不足金に対する遅延損害金、さらに原審の選任した鑑定人の鑑定による賃料(すなわち、原審ならびに当審が、相当額と認定したもの)を順次供託したことは、すでに認定したとおりであつて、控訴人が、右各供託当時において、その金額を提供されても、月額八、〇〇〇円の割合でなければ、賃料として受領する意思のなかつたことは、すでに認定した事実関係と、弁論の全趣旨からして明白であるから、現実の提供のない右各供託は有効である。

もつとも、本件賃料の支払期は毎月末日であるが、被控訴人幸生は、賃料の供託と同時に延滞賃料に対する遅延損害金全額を供託していない。

本件のように、賃借人が、延滞賃料のほか、延滞賃料に対する遅延損害金を支払うべき場合、賃貸人が弁済の受領を拒んだため、賃借人が延滞賃料額だけを弁済供託したとき、民法第四九一条第四八九条および同一賃貸借関係から発生する数ケ月分の賃料債務の性質より考えて、順次に、延滞賃料に対する遅延損害金、延滞賃料の弁済(遅延損害金相互、延滞賃料相互の間では、順次に、弁済期の先に到来したものの弁済)に充当される、と解するのが相当である(同一賃貸借関係から発生する賃料債務の性質から考えて、賃借人は、延滞賃料全額を消滅させるに足りない給付をしたとき、その弁済を充当すべき債務として、古い月分の延滞賃料をさしおいて、新しい月分の延滞賃料を、指定することはできない、と解するのが相当である)。

右弁済供託充当の解釈によれば、被控訴人幸生のした前記供託によつて、控訴人請求の延滞賃料およびこれに対する遅延損害金が全部消滅していることは計数上明白である。したがつて、控訴人の右請求は、いずれも理由がない。

よつて、控訴人の本件請求を棄却した原判決は結論において相当であつて、本件控訴を棄却すべく、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(小西勝 石田恒良 福島裕)

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